Dk部へようこそ3

 今日も僕はDk部の部室で、本の山に囲まれながら読書をしている。この部室にある本はでるた先輩とこんこん先輩が持ち込んだものだ。文字通り持ち込んだものもあれば、ネット通販で届け先をこの部室にして買い込んだものもある。先輩たちは卒業するときに、ここにある本をどうするのだろう?
 僕がDk部で学んだことはいくつかある。ラノベは読書数よりも自分が好きな作品に出会えることが大切だってこともその一つだ。でも、もう一つを敢えて挙げるなら、ツッコんだら負けだと言うこと。
 こんこん先輩が明らかにいじってくれ! と言わんばかりの服装でいても触れないことが大事だ。だから、僕は黙々と変態王子と笑わない猫を読み進める。
 でるた先輩も同じだ。こんこん先輩には触れない。たとえ、こんこん先輩がどこぞのシスターのような格好をしてても触れない。
 気にしたら負けなんだ!
「ねー、でるたー、お腹空いたんだよ」
 ……こんこん先輩、なんでわざわざインデックスの真似をしたんですか? 無駄に完成度高い衣装ですよね、それ。この前は葵・トーリを真似て全裸ネタだったし。基本的にこんこん先輩は読んでる本の影響を受けてる。実際今はとある魔術の禁書目録を読んでるし。
 いじって欲しくて仕方ないんですね。
「ねー、でるたー、無視は良くないんだよ。でるたー」
「あー! ボクはお前の幻想を、いやむしろこんこんさんをぶち殺してやりたいよ!」
 でるた先輩が本を置いて叫んだ。
 耐えきれなかったんですね、わかります。
 でるた先輩が広義を捲し立てる。
「大体、なんでインデックスなんだよ! 当麻、美琴、ミサカ、ラストオーダーとかあるだろ!」
「え、そこなんですか、でるた先輩!」
 思わずツッコミを入れてしまった。
 そもそも変な服装してるこんこん先輩がどうかしてると僕は思うんですが……。
「こんこんは、こんこんは! というのはやめておいたんだよ。それにでるたんはワタシの女装をみたいのかい?」
「思わない! そういう認識があるならインデックスの服装やめろよ!」
 でるた先輩のいうことはもっともだと思います。
 僕は溜息しか出ない。そういえばとある魔術の禁書目録ってこの前までアニメ二期をやってた気がする。とある魔術の禁書目録のスピンオフで御坂美琴に焦点を当てた、とある科学の超電磁砲も月刊誌で連載している。
禁書目録って、アニメの二期もやってましたよね?」
「あれは三期に期待だ。ここ数年ラノベ原作のアニメが増加傾向にあるような気がするな」
 ぜぇぜぇと肩で息をしているでるた先輩は、こんこん先輩の言葉に頷いた。
「確かに……とある魔術の禁書目録緋弾のアリアバカとテストと召喚獣といった最近のアニメもあれば、ベン・トー境界線上のホライゾンなどのアニメ化が控えてる作品もある」
 神様のメモ帳ロウきゅーぶ!もそうだ。これまで意識してなかったけど、ラノベを読み始めてから気がついたけど、これまでもいくつものラノベ作品がアニメ化してきた。
「アニメ化は良い面もあるな。なあ、でるたん」
「積本を崩す」
「……買ったら読めよ」
「知らないのか? 積本があるというのは精神を安定させるんだぞ?」
「ないから。――積本を崩すというのもあるけど、アニメ化の効果で原作ラノベに手を伸ばす人が増える」
 こんこん先輩は良いこと言ってるような気がするけど、インデックスの格好で言われても……説得力がない。
 そういえば、と思い出して僕は、
「マンガ化もありますよね」
「えっと、ここのところだとIS<インフィニット・ストラトス>はそうだし、紫色のクオリアもやってるか。やっぱりアニメ化直前の作品だったり、ラノベ作品として人気が出てきた作品はコミカライズされるよ」
 でるた先輩は自分が挙げた作品以外もあるかと、指折り数えている。
「コミカライズだけではなくて、ドラマCD化やゲーム化もあるな」
 考えてみれば、一ラノベ作品もメディアミックスされて、さまざまな媒体で表現されるようになってきてるな。
 やっぱり好きな作品がアニメ化などするのはファンとして嬉しい。
ラノベからコミカライズやアニメ化などがあるように、その逆もあるわけだ。ワタシやでるたんのように主食ラノベみたいな人種がマンガやアニメに触れる機会が生まれる」
「ボクのどこが主食ラノベだよ! ちゃんとごはん食べるよ?!」
 すみません、でるた先輩、先輩は読書だけしてれば腹が満たせる時載りのリンネみたいな人だと思ってました。
 心の中で謝罪して、こんこん先輩の話の続きに耳を傾けた。
「まあ、でるたんがごはん食べてるかどうかはどうでもいいとして」
「ひどくない? なあ、それはひどいよな?」
ガガガ文庫ハヤテのごとく!絶対可憐チルドレン神のみぞ知るセカイブラックラグーンなど小学館の人気作品のノベライズしている」
「他には電撃ゲーム文庫の探偵オペラミルキィホームズなんてのもありますね」
「おはよーおはよー」
「ここにいるよ!」
 こんこん先輩とでるた先輩が、ミルキィホームズに反応した。恐るべし、ミルキリアン。 メディアミックスを展開してる作品というのは思ってる以上にある。表現媒体が変わってファン層が広がるのは重要だと思う。
「最近だと、ラノベ作品のキャラクター、宣伝をTwitterでやってるケースもありますね」
「それだけではなく、作者がTwitterをやってることもある。作者に直接感想を伝えることができて、その反応がもらえることがあるからファンとしては嬉しいものだな」
Twitterの情報伝搬力を考えると、作品やレーベルの情報を流すの有効だよ」
 でるた先輩は言いながら、iPhoneをいじりはじめた。でるた先輩もこんこん先輩も、Twitterのアカウントを持っているみたいだから、情報伝搬力の実感があるのかな。
 でるた先輩は、iPhoneから視線を外さずに、
Twitterは情報発信だけではなく、Twitterでの小説が、ライトノベルになった少女と移動図書館のように場合もある」
「じゃあ、でるたんも、ワタシとの日々をTwitter小説として出して、是非ともライトノベル化してくれ。そうだなー、タイトルはDkアンソロでいいから」
「しないよ!!」
「残念だ。Twitter発だけじゃなく、web小説だったまおゆうやログ・ホライズンソードアート・オンラインがある。情報発信の敷居も下がってきてるから、物好きがワタシたちの小説を書くかもしれないぞ?」
「誰がいるんだよ……ボクは一つでも多くの作品に出会えたらそれで満足だよ。お腹いっぱい」
「やっぱりでるたんは主食ラノベなんじゃないの?」
「違うから!」
「どうだか。試しに一ヶ月ぐらいラノベを読んで生活したらどうだい?」
「いやだよ、ボクはこんこんさんみたいにサウザンドマスターになりたいわけじゃない」
サウザンドマスターへの道は険しいんだよ」
 こんこん先輩は、一年間で一千冊のラノベを読む。一体一日の時間のどれだけを読書に当てればそれができるのかと考えたくない。
「少年、君も本を読むだけじゃなくて、書き手に回ってみるのもいいかもしれないね。もしかしたら、それが何らかの形で世に出ることになるかもしれない」
「ぜひとも、エロい話がいいな!」
「「えろたさん……」」
 思わずこんこん先輩と声が重なった。
 読む側から書く側か……それも面白いと思うけど、僕はまだ読み手として面白い作品を一つでも読んでいきたいな。